事業内容を1/3づつ3年で承継 APEX/堀切千明会長【バトン -事業承継の形-】


事業承継は中小企業では8割以上、大企業も含めると9割以上が課題として捉えている、経営者が必ず直面する経営課題だと言えます。
しかし実際のところ、事業承継を進められている企業は全体の3割ほどにとどまり、6割以上が計画はあるものの進めていない、あるいは全く手を付けていないという状態です。
また、税制面や法律面での事業承継マニュアルなどはたくさん存在しますが、経営者同士の理念の引き継ぎなどソフト的な部分の事業承継については企業によって事情が大きく変わってくるため、画一的なマニュアルを作るのは難しいようです。
そこでギョビケでは事業承継を経験した企業や現在事業承継中の企業などを訪問し、バトンを渡す側と受け取る側にそれぞれインタビューを行い、それぞれの立場から見た事業承継の形をインタビュー形式の記事にしていく予定です。

第一回は鹿児島市の勉強堂グループのAPEXさんです。

鹿児島市武にある学習塾APEX(エイペックス)は、「媒体広告などを行わない、電話勧誘も行わない」という思い切った経営方針の学習塾です。
広告宣伝を行っていないながら口コミで評判が広がり、講師が入るまで入塾待ちの人が出るほど地域の保護者からは大人気。
そんなAPEXですが、実は2009年から3年掛けて事業承継を経験しています。
開業当時はAPEXという一つの学習塾でしたが、現在は勉強堂グループというグループ内に、主に学習塾経営が中心の(有)APEXと、教材DVDなどの製作販売を中心とした株式会社SPACEの2つの会社があます。
このうちAPEXの方が堀切会長から貴島社長に2012年、事業承継されました。
全くの他人への事業承継はどのような感覚で行われたのでしょうか。
事業を立ち上げた堀切千明会長に事業承継の経緯について話を伺いました。

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−事業承継はどのように行われたのですか。

堀切:2012年の12月1日に社長を交代しました。
それからさかのぼって3年前の2010年から3年間掛けて、三分の一づつ社長の仕事を渡してきました。
最後の一年に通帳と印鑑などお金の管理の部分を譲渡したという感じです。

−そもそも何故事業承継を行うことになったのでしょう。

堀切:私自身が新しい動きで色々忙しくなってきて、なんとかしなくてはいけないと思って。
そうなると権限を移譲をした方が良いという話が出てくるのですが、最大の権限譲渡は社長を譲ることだなと。
そこで、2010年にあなたに承継しますという話を貴島に言いまして、そこから3年掛けて少しずつ権限を譲渡しました。

−事業を承継するという話をした時に貴島社長はどういう反応でしたか?

堀切:まあ本人は当然の成り行きという感じでしたね。
ただ、いつ譲るかという期限がその時に切られたのは大きかったのかなと。
後継者は貴方だよ、というのはいつでも言うことが出来ますが、いつから貴方になりますというケツが決まると人間はそれに合わせて大きくなりますね。

−なるほど。

堀切:それと権限移譲をどんどんしていくことは大事ですよ。
これをあなたに任せるよと言っても普通は口を出してしまう。出したくなっちゃいます。
ですから口を出せなくするためには代表の役につけちゃうのが一番です。
一旦役をつけてしまうと、向こうは代表権持っている、こっちは持っていないですから。
やっぱり代表権持っている方に銀行も取引先も行きますからね。
税理士さんも、メールで「社長に決算書渡しましたから」って事後報告ですからね。
そんなもんなのかぁーって(笑)。
今別の会社の方も私は何もしていませんからね。
どんどん権限を譲渡して、その会社も黒字になったら社員を役員に付けて3年かけて彼を社長にすると決めています。
大分今年辺りから黒字転換できるのではと期待していますが、そうなったら来年あたりからはじめる予定です。
1回事業承継経験しているからだいぶ楽だと思いますよ。

−事業承継は3年で完了したんですね。

堀切:うちくらいの企業だと3年位で大丈夫ですが、大きいところは10年くらい必要だと思いますね。
私が前回の事業承継の時に真似たのは10年位かけて承継した企業ですが、小さい企業だと3年位でないと難しいですね。
実際やってみて感じました。

−スムーズに承継出来た印象を受けましたがどんな事が良かったのでしょうか。

堀切:私が会社にしがみつかなかったのが一番大きいですね。
私が作った会社ですから、いつまでもいようと思えば居られるわけです。
承継した後に代表権持ったまま「代表取締役会長」で代表権を残しているのが普通なのですけど、これをしなかったことが結果的に良かったと思いますね。

取材を終えて

グループ内の企業を幾つも立ち上げ、どんどん社員に事業承継して任せて行くフットワークの軽い経営スタイルに驚かされました。
現代の激しい社会情勢の移り変わりに機敏に対応するには、こういった新陳代謝の活発な企業スタイルが良いのかもしれませんね。
小さな事業承継を繰り返しながら、ホールディングス的な部分はご子息に承継させる予定とのことなので、その時にも数多くの事業承継の経験が活きることでしょう。
いきなり大きな事業全体を承継するのではなく、まずは小さな部分の業務の承継を行うという形は参考になりそうです。
塾経営から始まり、将来的には学習塾の親御さんや自分たちもお世話になれる養老施設も作りたいと語る堀切会長。
これから一体何回の事業承継を経験されるのでしょうか。
次回はAPEXを引き継いだ貴島社長のお話を伺います。(6月29日更新予定)